まわりのアメリカ 3月<マートル・ビーチ特別編>

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マートル・ビーチ(Myrtle Beach,サウスカロライナ)

3月14日(土)家のまわりに緑があるのは,それはそれで贅沢なことだとは思うのだが,このところ,無性に海が見たくなってきた。アメリカでの週末も残すところあと10回程度,近場で気になるところは,少しずつ消化していこうと思う(日本人っぽい)。今回はトライアングルにいる日本人達の間で割と話題に上ることの多いマートルビーチ(Myrtle Beach)。ゴルフが好きな人なら,100カ所もゴルフ場があるので目を輝かす場所らしい。あいにくクラブセットは,日本に置いてきてしまったし,今からクラブを手に入れても減価償却できないのは目に見えている。子連れファミリー旅行に徹しようと思う。

 朝10時頃に家を出た。風は強いが比較的暖かい。サウスカロライナを目指し,いつものようにフリーウェイに乗る。東へ向かうI-40からI-95に乗り換えしばらく南進。ノースカロライナとサウスカロライナの州境が近くなると,アミューズメント施設のSouth of the Borderの看板が次々とでてくる。これらは同じものではなくて,一枚一枚が違う文句になっているので,次を見るのが楽しみになるほど。これなら特に用事のない客なら思わず寄り道してしまうかもしれない。が,だまされないぞ(実際に行っていないから,わからないけど)。

 サウスカロライナ州に入るのは,こちらに来てから二回目。I-95はヒルトンヘッドアイランドに行くときにも通った道だ。サウスカロライナに入ったとたんに道が悪くなる。ノースカロライナのフリーウェイは割とアスファルトが敷かれているところが多いのだが,サウスカロライナではコンクリートの大きな板を順々に敷いていったような道で,継ぎ目でのショックが大きく,結構疲れさせられる。サウスカロライナのウェルカムセンターでいつものように資料を集め,Exit 181で一般道におりて,田舎道を進む。フリーウェイを降りてからが結構長く感じる。いやに花火屋が目立つのは,このあたりが有名な生産地なのだろうか?所々で休みながら,全行程200マイルほどを約4時間半で目的地のマートルビーチにたどり着いた。町に入ると今度はやたらpeewee golf(ミニチュアゴルフ場)が目立つ。ジュラシックゴルフ,キャプテンフックゴルフ,ジャングルゴルフなんてのもあった。これらは,全部で30あるらしい。

 スプリングブレーク中とはいえ,さすがにまだ本格的なシーズンには早いので,ビーチにも人が少なく,もちろん泳いでいる人もいないようだ。僕らはマートルビーチのダウンタウンをちょっとはずれたところにある,シェラトン系のFour Pointsというホテル。せっかくなのでオーシャンフロントの部屋を予約してみた。部屋にはいると確かに海は目の前に見えるが,期待していたのとはどうも雰囲気が違うし,なぜか既視感もある。理由をいろいろ考えてみたところ,はたと気が付いた。このあたりは,道の狭さ,ホテル群の外壁の老朽度など,英語の看板が日本語だったら「熱海」と間違えそうなくらいよく似ているのだ。ヒルトンヘッドアイランドが高級リゾート地とすると,マートルビーチでは,そこまでは垢抜けせず,町全体からだいぶ手抜きが感じられ,ターゲットとしている客層が,リゾートでも出費を抑えたい層にシフトしているように感じられた。一泊二日なんかで来る方に無理があるのはわかっているが,夏来ていたらもっと印象は違うのかもしれない。とはいえ,このあたりでは一番大きなビーチリゾートなので,お決まりのファクトリーアウトレットやリクレーション,エンターテインメント施設はかなり充実している。

 渡米したばかりの時にロサンゼルスでお世話になった,bakちゃんファミリーがお勧めというミディーバル・タイムズ(Medieval Times)というショウ・レストランがマートルビーチにもあるというので,ノースカロライナから予約を入れておいた。今回の旅行は,これがメインのイベント。予定より少し遅くなってしまったので,荷物の整理もそこそこに,ここへ向かうことにした。このショウ・レストランがある場所はかなり広く,大きなファクトリーアウトレットが3棟,ディナーショウ専門店がいくつかと映画館などのコンプレックスとなっている。

Castle
お城の模型の前で

 ミディーバル・タイムズの建物は,城のような外観なので,遠くからでもよくわかる。入り口で予約を確認後,チケット売場に進み,子供を膝の上に乗せるなら,2歳の娘の分は無料といわれる。他のレストランに行くときでも,子供の分は特に注文せずに,親のを分け与えているので,それでいいと伝えた。AAAのメンバーだと入場料が約1ドル安くなる。入場券(ディナーとショウの料金が含まれる)は,一人約30ドル。そういえば,ここのパンフレットにもウェブサイトにも料金が書いてないのは,ずるいと思う。きっと料金改定の度にパンフレットも改訂する必要がないからだろう。とは言っても,お客のことを考えているとは思えない。ウェブの情報くらいは,ちゃんとしようよ。

 料金をカードで支払うと,テーブルナンバーが書かれた整理券を人数分渡された。運がいいことに,今日はそれほど混んでいないのか,料理は出ないが,特別に娘も通常の席に座っていいとのこと。整理券をもらうと,紙で作った青い王冠を頭に載せられた。訳が分からないうちに,王国のお妃様だという人と写真を撮らされる。きっと後で高く売りつけられるのだろう。しかも僕らはこれを買ってしまうに違いないのだ。王冠の色は全部で6種類。この色で座る席が分けられている。悲しいかな,頭のでかいアジア人の僕には,この紙の王冠を最大限の大きさに調節しても,頭がきちんと入ることはなかった。どのアメリカ人でも,すっぽりかぶっているというのに。まぁ,その分,使っていない脳細胞が余分に詰まっていると思うことにしよう。

みんな時間を持て余し気味

 次にまた別の部屋に進む。ここはショウが始まるまでの時間をつぶすための広い部屋で,中世の城の中といった装飾が施され,鎧や剣などの戦闘関係の土産物を売っている。けっこうリアルなものも置いてあるので,少したじろぐ。キャッシュ・オン・デリバリーでドリンクを頼むこともできる。壁に据え付けられた大きな地図から,ここの設定はスペイン北部であることもわかった。子供は飽きやすいので,早くここに着いてしまった家族連れはみんなうろうろしている。団体バスで乗り付ける人たちもいるようでかなり混んできた。ショウが始まる前に,当時の正装に扮した司会役が自信たっぷりに現れ,お客に,自分たちのかぶっている王冠の色を言われたら,雄叫びをあげ,他の色に対しては「BOO!」と嫌悪の表すよう指導される。その後,今日結婚記念日や誕生日の人たちをお祝いするイベントがさらに30分ほど続く。結構待たされる。娘はすでに疲れてきたようで,ぐずり始めた。早く何か食べさせなければ。でも身動きできないほどの混雑。たぶん1000人くらいは,この部屋にいるはずだ。僕らの王冠の「青」は,最後に入場だと言われる。娘をあやすネタも尽きたが,しかたないので腹を据える。ここへ来てから1時間半後に,なんとか目的の部屋にたどり着くことができた。

 ディナー・ショウは,アリーナのような場所で行われる。観客席はそれを取り囲むような形で配置されている。予約しておいたのが良かったのか,早く来たからなのか,僕らの席は,真ん中に近い一番前。グランドにはきちんと均された砂が敷き詰められている。この砂がショウの最中に観客席まで飛び散らないようにする配慮からか,僕らの目の前にはガラスのついたてが据え付けられている。最初は馬が何頭か出てきて,ダンス(というか,音楽のリズムに合わせて馬が歩く)。最後には,馬がお辞儀までする。実に,よく調教されている。馬は斜めにも歩けるのを今日,初めて知った。ショウと一緒に料理も運ばれ始め,娘も「おんま,頑張れー!」と叫んだり,リズムを取ったりして,目を輝かし始めた。少しほっとする。

トーナメントの始まり

 やがて王とお妃がVIP席に登場し,客の王冠の色にあわせた鎧や甲をつけた騎士達が馬に乗ってでてきて,天覧試合(トーナメント)を始めるという趣向。客はこれを見ながら料理を食べるわけだが,出されるものも中世という時代設定にあわせて,ナイフとフォークは使わず手づかみで食べることになっている。メインディッシュのローストチキンは,アメリカの肉にしては珍しく柔らかく,手でちぎりやすいように調理されていた。指で掴むには多少熱いが味はまぁまぁ。そのうちウェットティッシュも配られるが,日本のように最初におしぼりが出されるわけではないので,手の汚れが気になる場合は,自分でウェットティッシュを持ってきておいた方がよいかも。

一騎打ち

 騎士達は僕たちの目の前で,日頃のトレーニングの成果を披露し,互いに技を競い合う。さらにトーナメントでは馬上で剣や槍を振るい,文字通り火花を散らす程の白熱したファイトが見られる。一緒にいるアメリカ人達は,自分の色と同じ色の騎士を応援するのだが,自分達の騎士が相手の騎士を馬から振り落としたり,剣をはねとばすのを見るたびに,ディナーそっちのけで,腕を振り上げて叫び,反対に敵方が調子良さそうだと「BOO!]」と威嚇する。こんな盛り上がりを見るのも結構楽しい。しまいには「殺せー!」なんて声も聞こえてくるほどなので,いまどきの,暴力に目をとがらせている人には,ちょっと刺激的すぎる内容かも。ついでに動物愛護団体からもクレームが付くかもね。ショウが終わった後,外に出たら,少年達がおみやげに買ってもらった剣で,チャンバラをしているのを見かけた。きっと自分たちがさっきの騎士になったつもりなのだろう。いやぁ,影響力強いよ。これは。僕らは楽しんだけど。

建物の前で

 このメディーバル・タイムズは人気があるらしく,フロリダのキシミー,カリフォルニアのブエナパーク,テキサスのダラス,ニュージャージー,イリノイ,カナダ・オンタリオ州のトロントにもあるそうで,このチェーンのオーナーは,実際にこの設定となったスペインの城主の子孫だとのこと。史実に基づいたリアリティだとも,パンフレットではうたわれていた。実は,このパンフレットには,例の僕とお妃様の写真が貼られている。6ドル也。

 今日は,久しぶりに波の音を聞きながら,眠りに落ちた。

3月15日(日)大西洋の日の出を見たのは初めて,だと思う。

大西洋の日の出

 午前中は,部屋でのんびり過ごし,ホテルのチェックアウトを済ませてから,家族で砂浜をしばらく歩いた。波打ち際を走るランナーは全く途切れない。気温は昨日よりも少し高いようで,潮風が心地よい。

 マートルビーチには大きなファクトリーアウトレットのショッピングセンターが二つある。ひとつは,昨日ショウがあったファンタジーハーバーOutlet Park Shoppers at Waccamaw,もう一つは,イルカが目印のマートルビーチFactory Stores。どちらも広いので,両方とも気が済むまで見て回るとなると2日がかりだと思う。僕らはポイントを絞って,安くなった冬物や売れ筋ではないおもちゃなどを手にして帰途についた。

 夕食は,なんとかたどり着いた地元ダーラムのボブ・エバンスで,チキンと野菜の炒め物,白身魚のフライなど。このお店は,僕が知っているアメリカのレストランの中で,一番日本のファミレスに近いと思う。店員は愛想が良く,いつも子供にちょっとしたものが渡され,割と気持ちよく食事ができる店だ。最近やっとウェイターがどうやって,お客のアイスティーのおかわりで,砂糖入りとそうでないアイスティーを見分けているかがわかった。どうやら客のグラスにスプーンを入れるかどうかで判断しているようだ。最初見たとき,アメリカのウェイターは,チップがかかっているだけあって,さすがプロフェッショナル,客のことをよく覚えると思って感心していたのだが,まぁそれほどでもないのかもしれない。

 往復約500マイル(800km)を二日でというのは,アメリカではそれほどきつい旅ではない。ドライブにも慣れてきた。次はどこへ行こうか。


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リンク

マートルビーチ:http://www.travelmyrtlebeach.com/
Four Pointsホテル:http://www.sheratonresort.com/
ミディーバル・タイムズ(Medieval Times):http://www.medievaltimes.com/
ファンタジーハーバー:http://www.fantasyharbour.com/
Outlet Park Shoppers at Waccamaw:http://www.outletsonline.com/outletpark/ita.html
マートルビーチFactory Stores:http://www.charter-oak.com/myrtlebeach/