このフューエルリッド(給油口の蓋)は,単なる機能部品のカバーではなく,この車のインダストリアルデザイン哲学を最も強く象徴するアイコンの一つです。
フューエルリッドのデザインは,円形のアルミプレートに,六角ボルトが等間隔で打ち込まれているように見える,極めて工業的で特徴的なルックスをしています。
1. 「剥き出しの機能美」の表現
インダストリアル・シック: このデザインは,自動車の内部構造や機械部品をあえて隠さず見せることで,「機械」としての美しさを強調するインダストリアルな美学に基づいています。
ボルトの視覚効果: 実際にリッドをボディに固定しているのは中央のヒンジ構造であり,周囲のボルトは「ダミー」または「装飾」としての役割が大きいです。しかし,そのボルトの存在が,まるでレーシングカーや航空機のように,リッドがボディに強固に固定されているという視覚的な緊張感と信頼感を演出しています。
素材の強調: アルミニウム調の素材を使用することで,光沢とマット感のコントラストが生まれ,シンプルな円形に深みを与えています。
2. 円の統一性を完成させる最後のピース
フューエルリッドは,この車のボディライン全体が持つ「円」のモチーフを,最も小さなディテールとしてボディサイドで完結させる役割を担っています。
サイドビューのアクセント: 滑らかで一切の無駄がないボディサイドのラインにおいて,このリッドは機能部品でありながら強力なアクセントとなり,デザインの退屈さを打ち消しています。
エクステリアとインテリアの連動: 前述の通り,この「円形+ボルト留め」のパターンは,インテリアの円形エアベントや,場合によってはシフトノブ周りの装飾にも反復して使用されています。
これにより,内外装の間に一貫したデザイン言語が確立され,車全体としての完成度が格段に高まっています。
3. バウハウス哲学との関係
幾何学的な純粋さ: フューエルリッドは,純粋な「円」という幾何学的な形をベースにしており,バウハウスが重んじたシンプルで合理的な造形の追求そのものです。
機能を伴う美: 給油という機能を持つ部品に、工業的な「固定ボルト」という意匠を与えることで、「機能美」を具現化しています。
このフューエルリッドは、「ミニマリズム」と「機能的エレガンス」を体現する,非常に重要なデザイン要素です。
この車のデザインは、まさに細部に神が宿る好例と言えます。


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